まろちゃんと先生(2)Steven Wilsonのこと

2018年11月15日 22:46

 

あれから結構経つのですが、

いまもまだライブの光景?感触?頭の片隅にずっとあって。

って文字にするとほんと、端から嘘くさい感じですね笑

 

受けた感動は消えてなくなることはないんだけど、感覚として薄れていくものでしょう

こんなに感動したことも、心が動いたこともいつか薄れていく。

儚いですね。儚いことです。出来事は全部儚いよね。

 

そういう世界の中で、普遍を捕まえる洞察力を持っていたり、

消えていく一瞬を切り取る術を持つものがアーティストという存在なんだと

私は考えているんですけど

 

私にもそんなふうに、あの二晩の光景を切り取る術があったらなとすごく思います。

研ぎ澄まして、持っている語彙を総動員しても、あのとき感じた芸術の力を形にするのは難しい。

 

思い出してもため息が出るような、捕まえられない何次元もの空間を作り上げる人間

そういう存在を知れた喜びと切ない気持ち 笑 嘆息

 

ライブを見た友達がこんな事を言っていました

 

ウィルソン先生がすごすぎて、昨日はしばらく落ち込んだ。

「世の中にはこんなすごい人がいるのに、おれときたら…」と。たまにはこうやって落ち込むのもいいね。

ガタガタ言ってないで、やることやろうって気になります。

 

比べる相手が間違っているのはわかっているけど(笑)、と。

 

それすっごいよくわかります。

ほんと、あんな天才と自分を比べて落ち込むことすら激烈おこがましいんだけど笑

じゃあ自分にできることはなんだろう?なにができるんだろうとかそんなことを考えるような体験でした。

人が作ったすごい作品と相対するときは、たいがいそんな気持ちになりますね。

 

*************************

そういうわけで、出来事を書きますw

 

一日目のライブはまろちゃんと二人で会場に駆けつけたんですけど

まろちゃんは先生に挨拶したりしないのかな、と思ってたら

 

(実はAftershowに声をかけてもらった、二人までオッケーって言われている、一緒に行かないか)

 

と言う。「え、、、、、、、、」

なんにも持ってない、なんにも用意してない、会社帰りの適当な服で、ええええ

無理!と思ったし私そんな資格が、、、、とかなんか言ったと思うけどこんなこともう一生起きないじゃないですか。Not in this lifetimeでしょ

 

曲聴いてライブ動画見て、すごいすごいってずっと言ってた人と会えるとか。

ド厚かましい精神を起動させ「行きたい」って言っちゃいました

 

ライブ中が宇宙体験だったので「このあとあの人に会えるんだ」なんてことは全く考えられなくて精神パンチドランカーみたいになってオイオイ泣いてたし化粧もめちゃくちゃです

 

通路に出ると、Aftershowパスをお持ちの方はこちらです、と係員さんに言われ列に並ぶ。

どれくらいの人数が招かれるんだろう??と思ったら、ちょっとはっきり覚えていないけど10人位??すごく少ない・・・

みなさんどういうご関係の方なのか全然わからない

 

最初に楽屋ルームに通されて、石像みたいになってつっ立っていたら、メンバーが入ってきました。

そこに先生はいなかったので、ああ、そうかもしかしたら先生には会えないのかなと思いました。

 

招かれたのは恐らく旧知のご関係の方々。

久しぶり!!と言いながら抱擁しあい近況報告を交わされている様子を呆然と眺め、誰にも話しかけられず壁のシミと化す・・・笑

 

その間まろちゃんはまろちゃんで「緊張する」と言いながら挙動不審になっているし、なんだこの空気 笑

といった風で、私は逆に緊張が完全オフ状態になりました 素です。

 

楽屋で挨拶を交わすのがAftershowなんだな、ゴージャスなお姉さんがいっぱいいて、華やかなショウビズ界の面々が今後の方向性についてお酒を酌み交わしながら語る場所、じゃないんだわね、なんでも体験してみないとわかんないね~と思ったところで

 

スタッフの方が「まろさんいらっしゃいますか」と探しに来ました

返事をすると、上にどうぞと言われる。

上ってなんだ?

とことこ付いていく。階段を登ったら、通路にお菓子とかフルーツとかドリンクが並んでいて「あ、これはバックステージ動画でよく見る光景。。。。」

 

と思っていると、ふいにニック・ベッグスさんが現れた。まろちゃんを見るなり

「maroooooooooooooooooooooooooooooo」

まろ、元気だった?久しぶりだね!!とすっごい嬉しそう。

これ、まろちゃんが名乗る前にマロ~~~~~って仰ってたからすごい!名前ちゃんと覚えられている!

 

まろちゃんはバンドメンバーみんなに新しいイラストシールとかわいいアクリルキーホルダーを作って持ってきてたの

 

その場で説明しながら渡すとそれはもうすごい喜びようでした。私、横から「彼女天才じゃない?」って言ったら「ほんそれ」って言ってました(もちろん英語でw)

「本当に素晴らしい、マロこれは最高だよ写真撮らせて、あとでSNSに上げるから!」って。

すごい笑顔でしょう。ほんとに嬉しそうだったんですよ。

大喜びのニックさんにヨーコですと名乗ると「会えて嬉しいよヨーコ」と。

ふたりとも何か飲む?と聞いてくれる優しい方でした。

 

そのまま促され先に進むと、クラブハウスのような部屋にたどり着きました。

そこには様々なCDが置かれ、音楽が流れていて・・・温かいお料理が並んでいました

 

メンバーとスタッフほんの数名がうろうろしていて、

ゲストは、まろちゃんと私とあと2人くらい!え~~~こんな感じなんだ

あまりに普通な光景でバシバシ写真撮るのも場違いな感じ 笑

 

そのうちドラムのクレイグさんがマロ~~~~!!!と寄って来て

まろちゃんがキーチェーンやシールを手渡すとこれまたAmazing!!!の嵐

 

前にもらったチョコのマグネット(シアトルでまろちゃんがメンバーに会ったとき、チロルチョコのラッピングにメンバーの似顔絵を添えたマグネットをプレゼントしてたの)ね、あれ冷蔵庫に貼り付けてるんだよ。

子どもが「わあ~~~これパパじゃん!!!」って大喜びする

だから「そうだよパパだよ」ってドヤ顔キメてるんだよって話してました。

ギターのアレックスさん、キーボードのアダムさんも満面の笑みでまろちゃんとハグしています

 

さっきまでステージであんなすごい宇宙的演奏してた音楽の鬼な人たち・・・

 

私はだれとも面識がない。

それでも「誰?マロの友達かな」って感じで軽く会釈したり微笑んだり

してくださって(えーとわたしはほんとうにここに居ていいのか。。。。)と思いながらただ見てました

ライブがわたしにとってどんなに衝撃的だったか、伝える能力があればいいのになあと思いながら。

 

なんかだってね、「ライブ素晴らしかったです」「感動しました」を口頭で伝えるの、死ぬほど難しくないですか?笑 言語の壁もあるし。そんな幼稚園児みたいな感想聞かされてもなにも返す言葉ないだろう

 

そんなんしているうちに、先生の姿がチラチラドアを出たり入ったりしている

スタッフとお話したり、ゲストと挨拶したり・・・

靴は履いていた

 

先生だ

 

普通だ・・・・天才はすごく普通だ、ピリピリ感ゼロだ、普通の人だ

とても目がきれいで、最近短くした髪がよく似合っていました。髪を掻き上げたり唇に手を当てたり、椅子に手をかけたりしながらいろんなひとと静かな声で話してる。本当にきれいなイギリス英語。当たり前だけど、MCのときと同じで聞き取りやすい。

そのうち見えなくなってしまった

 

もうお話できないのかなあ

まろちゃんがお誕生日のお祝いに描いた新しいイラストもまだ渡せていない

誰かに託すしかないのかな

 

そしたらさっきまでTシャツ一枚だった先生が、ストライプの長袖を着て戻ってきたんですね

 

まろちゃんに気づいて、近づいてくる。

第一声は

まろ~~~~~!!!まろ、、、、ジーニアスアーティスト・・・!!!

元気だった?

 

まろちゃん白目

 

まろ、一体日本でのライブはどうなることかって思ってたよ。ソロでは初めてのことだしね。楽しめた?そう、良かった、すごく良かった。

会場のみんながすごく喜んでくれて、本当に良かった~。

 

ほっとしたよと言いたそうな口ぶりでした。久しぶりの日本公演で、すこしはナーバスな気持ちになっていたのかな。

これはMCでも言っていたので、きっとそうだったんでしょうね。

 

自分が描いたイラストのTシャツを着てる人がたくさんいるのを見て、どんな気持ち?

 

まろちゃん「変な感じ・・・・」

 

(笑)あのイラストは本当に素晴らしいよ。

 

先生の話しぶりは、全くファンに対してる雰囲気ではなかったのね

同じアーティストとしてまろちゃんに敬意を抱いた対応をしている、それを私は非常に強く感じていました。ずっとまっすぐに目を見て、まろちゃんが何を言おうとしているのか、全神経を傾けて聞こうとしている。

 

それからステッカーとキーチェーンをまろちゃんが手渡して、こうするとほら、ちゃんと立てられてフィギュアみたいに飾れるの、と説明している手がすごく震えていて緊張しているんだなあと思った

 

先生Amazingの連発(みんなAmazing叫びすぎ問題)

 

ソーキュート!!キュートイズネ?!?って言ってた。

なので横から「ソーカワイイ、right?」と言ったら「Yepカワイイ、ソーカワイイ」

カワイイは世界共通語。

 

まろちゃんが「あとね、あと、、、お誕生日おめでとう」とイラストを差し出す。

今回のツアーでは、ピンでテレキャスをかき鳴らしながら歌うEven lessが肝のひとつ。

だからまろちゃんはテレキャスを弾く姿を書いたんだって。

 

 

そうしたら先生は絵をじっと見つめて、すごい・・・・・すごいこれ!

素晴らしいよ・・・まろちゃんと私を交互に見ながら

俺ロックスターみたいじゃん!!って

 

「だってそうじゃん」って突っ込んでしまいました笑

そこでやっと、友達のヨーコですと名乗って・・・笑

先生「はじめましてヨーコ」と笑ってました

 

ありがとうほんとに、ってさらりと終わらないのが先生

この絵は・・・写真を見て描いたの、それともイマジネーションで?

まろちゃん「両方」

両方か。この、左手がちゃんとコードを押さえているのがすごくいいよ

 

なんていうコード?と私が聞いたら、フレットを押さえる仕草をしながら

F#mだよ、この指を見てこれはRoutineを弾いているところを描いたのかなって思ったんだ。

だから聞いたんだ、写真を見て描いたの?って。

 

まろちゃんは感無量すぎたのか黙り込んでいて

先生が「君は英語わかるよね、まろに俺が何言ったか説明してあげて」って言い出しました笑

まろちゃんは全部理解していたんだけどね。

 

あとでRoutineのコードを調べたら、ちゃんとF#mから始まっていました。

 

長いことイラストをじっと見てた。

あとでIgに写真アップしてたものね。本当に心から気に入ったんだと思います。

所謂「いなす」対応がここまで一秒もないことに、死ぬほど感動していました

まろちゃんは「今死にたいです」とか口走ってた気がする

 

まろちゃんはこの日、新しいイラストが描かれた大きなトレーナーを着ていて

それを先生が、いいねえ、日本に来る前に髪を切ってしまった(からイラストとは違っちゃった)けど、すごく嬉しいよって

まろちゃんの長い髪をそっと退けて、眺めてもいました

 

それから、誰かに話しかけられてこの会話から離れていきそうになった先生

黙り込んでいたまろちゃんが意を決したように、す、スティーヴン!!って小さく叫んで

 

気持ちを一生懸命話し出したんです

先生の作品を、先生の作り出す世界をどんなふうに受け止めていて

どんなふうに愛しているかを

 

それは時々涙混じりで、途切れて、詰まって・・・

まろちゃんは英語を話す人だけれど、抽象的な心情は母国語で説明するのだって、ものすごく難しいことでしょ

 

だけどまろちゃんは、どうしても伝えたかったんだと思うんですね

全部を話し終わるまで、長い時間でした

 

その間の先生の真剣さ、一つたりとも逃さないでこの子が言っていることを理解したいという表情、まろちゃんの真摯な言葉選び

 

すごい光景だった。これはファンとアーティストじゃなくて、同士の交流だと、見ている私が涙目になるほどでした

 

まろちゃんはArt、Core、という単語を何度も口にしていたな

私は光景に感動しすぎてて、まろちゃんがなにを説明しているのか途切れ途切れにしかわからなかった

 

先生は、まっすぐにまろちゃんを見て

 

君の言っていること、全部、全部わかるよ

そんなふうに言ってもらえるの本当に光栄だし、俺は君がしてることもすごくいいと思う

 

だから君の描いてくれた作品をすごく大切に思ってるんだよ

 

と、いうような返事をしていたと思います。

 

まろちゃんはそこで電池が切れまして

先生はありがとうね、と言って他の人と話に行きました

 

まろちゃんとわたしはちょっと椅子に座って・・・

まろちゃんは灰になってて、わたしはそんな光景に立ち会えた感動で言葉出なくて

 

すごいもの見たわと思いました

 

アフターパーティーは、誰ひとりお酒を飲んで大声出すこともなく

とてもとても静かに、誰も食べ物など口にもしていなくて

メンバーが好きなのであろうCDが気持ちよく流れている空間でした

 

そろそろ帰ろうか、と二人で席を立つと

先生が「帰る?今日はほんとに来てくれてありがとう」

また明日もライブ来るねというと明日も来てくれるんだ、嬉しいな!忘れ物ない?

 

まろちゃんが持っている傘を見て、あれ、いま外は雨が降っているの?

知らなかったよ

 

また明日ね

 

こうやってEXシアターの裏口から雨の六本木の街に出て。

 

駅までの道で、まろちゃんがあのねアートって、答えじゃないと思ってるの

人は作品を見て、期待と違うものだと怒ったり失望したりするけど

アートって答えじゃなくて、答えを見つけるまでのパス(道程)だと思っているの・・・・

それでねわたしは先生の、そのパスを、見せる方法や姿がすごくすごく好きで

すでに称賛された方法にとどまらず、どんどん脱ぎ捨てて新しいものを作り出す姿勢が・・・

それがすごいと思うの

 

というようなことを弾んだ息で日本語で(笑)わたしに説明してくれて

 

私はそれに対して、すごくとんちんかんな受け答えをしたと思います

たぶんまろちゃんには何いってんだこの人と思われたんじゃないだろうか笑

 

ライブの衝撃がまだ残っていて、明日もまたこれを、というか、明日は全然違うセットリストでやるからねという予告も脳裏に鮮やかで

 

立場が上とか下とか全然ない、すごくフラットな目線で語り合う、アートを作り出す二人の会話の素晴らしさにもうわけわからないまま帰ってきました。

 

本当はもっといろんな事を話していたと思います。もっと覚えててくれ自分の脳とも思うけど

六本木の夜はそんなふうに過ぎていきました。

 

生きていることはすごく、しんどかったりするんだけど

「マジでよかった、生きていられて」と思えた瞬間でした。

 

悲しい曲を作ることが多いけれど

悲しい出来事の中にも希望は必ずあって、出来事や物語の中にあっても

孤独じゃないことを感じられることもある。昇華。

それを描きたいんだ、幸せな曲を作ることにあまり興味はない

 

作品を通して、聴く人に音楽の旅をしてもらいたいと願っている

 

と先生がインタビューで言っていたけど

心底、一曲一曲に旅があったなあと思いました

 

ライブすべてが、コンセプチュアルな総合芸術体験でしたし

二人の会話もまた、アートだったんですよ

 

貴重な機会を得られて、幸せでした。まろちゃん、先生、バンドのみなさんありがとう

 

バックステージを見れた、私が先生と話せたってことより、

二人が話しているのを見られたことが

一番嬉しかった出来事です。

 

(長えわ・・・・)