100年後のSweet Child

2014年05月12日 22:10

ヤングな皆さんは想像もできないだろうけど
私の青春時代(江戸era)は
コンピューターといえば大きくて四角くて
たくさんの光を点滅させながらなぞの紙を吐き出す漫画のなかのものでした

 

携帯電話は肩から下げるもので、
線のない、画面のついた電話で動画を見るなんてことは
手塚治虫先生とジョブズの頭のなかくらいにしか存在していなかったと思います

 

もちろん、Youtubeという神の計らいも存在しなかった

 

当時の若造が、「あああああ…あのPV見たい…今すぐ見たい…」となったら
一体どうしていたのか

 

音楽番組をVHSに録画しておくのが一番の選択肢。

 

あとは、
娯楽施設に設置してあるレーザーディスクボックスに100円入れて見てたんです
一曲100円。当時の缶コーヒー1本分。
高いと思うか安いと思うか。
なんでも苦労なく、タダで見られる今では「高い」と感じる値段でしょうかね


私のお友達は
November RainのPVを音楽番組から録画し、毎日擦り切れるほど見ていたそう。

その録画には、冒頭にビデオジョッキーのお姉さんの語りが入っていて

November Rainっていうといつも
脳内ではそのお姉さんのセリフも一緒に再生されちゃうんだよね、
と言ってました。

 

彼女の中のNovember Rainは、お姉さんとセット。

 

PVはいつもフルでオンエアされるわけではなく、
途中で切られて小林克也さんが解説を始めたり
無常にもフェードアウトしてCMに行ってしまったり。

 

「今日マイケル・ジャクソンの新曲がフルでオンエアされるらしいよ!!」

的な情報がもたらされるのは友達からの電話がほとんど。

それももちろん、家電(いえでん)。黒い電話ね。ダイヤル回すやつ。
写真でしか見たことないだろうな。

 

長話してると親に怒られるやつ。
なぜか玄関あたりに置かれていることが多かった
冬は話が長くなると凍えました

 

音楽って
それを聴いていた頃の記憶とともに自分の中にありますよね

 

黒い家電、途中でぶった切れるPV、100円入れて眺めた画面
それが私の中の洋楽の風景。

 

皆で共有している曲だけど、とても個人的な「体験」。

作品というのは、そういう意味で考えると
不思議なものだなあ、と思います。

 

創りだした本人すら
想像もしなかったような受け止められ方もあるんだろうな

作者の個人的な感情や、伝えたい思いを乗せた
音楽・絵・文章・舞台・彫刻・衣装…
人の手で創られるものはすべて
それぞれの生活に入り込んでさまざまに変化していきます

 

インスピレーションを受けたり、なにかを思い描いたり
励まされたり圧倒されたり、刺激されまた何かを生み出したり

 

凡庸な表現ですが

作品というプリズムを通して、
それぞれがいろんな虹を見ているとでもいうのか…。

国や時間や年代、聴いていたシチュエーションが違っても
同じプリズムを通して感動している

何百年も人を感動させ続ける作品とは、一体どういうものなんだろう?

 

ギリシャ彫刻とか、モーツァルトの曲とか…

 

圧倒的な表現力やテクニックの秀逸さというのももちろんあるけれど

もっと根本的なところというか
「あっ、それわかるような気がする」っていう感覚なんじゃないかなと
私はなんとなく思う…(ほんとはどうかしらんけど)

 

それぞれの個人的な体験なのに、あらゆるフィルターを超えてしまう共感
それか?
それがプリズムなのか?

 

ボキャ貧なので舌足らずな説明しかできませんが

そういうプリズムを作る人たちっていうのは
自分の感覚を大事にしながらも、人も見えているし、先もちゃんと見えているのかな。

 

目先の成功とかじゃないんだろうな。

 

ガウディみたいに、
自分が死んだ100年後にやっと完成する教会を設計しちゃうみたいな発想というか
(初めてそれを知った時本当に感動したよなあ…)

 

アクセルは、

ぽっと売れて終わりみたいな曲は一切作ってない
自分が生きた証を少しでも残したいから

 

と、デビュー当時のインタビューで言ってましたけど

 

アクセルも、そういう人の一人なんじゃないかと…
ちょっと笑っちゃうかもしれませんが

 

わたしは、100年後も、必ず誰かがSweet Childを歌ってるって思うんですよ

 

Her hair reminds me of a warm safe place
Where as a child I'd hide
And pray for the thunder and the rain
To quietly pass me by

 

という歌詞は、100年経っても相当「あ、それわかる」だと思いますしね

 

ハードロックというカテゴリーとか遅刻とか太ったとかそんなことはほんとうに全く問題にもならない

そんなことどうでもいい

 

100年後も残るものを作る人、そういう人だと思っているから、

私はアクセルから目が離せないのだ 

四半世紀も